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仙台高等裁判所 昭和31年(ラ)206号 判決 1957年3月18日

控訴人 西条勝治郎

被控訴人 五内川藤次郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は被控訴人において「訴人西条七郎は亡島コヨの兄亡西条芳治郎の養子である。」と訂正して述べ、控訴人において「昭和二十五年九月九日島コヨの死亡により控訴人及び訴外西条ヨスイ、奥寺トメヨ、亡松塚コンは兄弟姉妹として、訴外西条七郎はコヨの兄亡西条芳治郎の養子としてそれぞれコヨの遺産を相続したことは争わないが、被控訴人がその遺産管理者に選任されたことは否認する。選任されたとしても右選任は遺産管理者の資格のないものを選任した違法のものである。」と述べ、

証拠として被控訴人は甲第一ないし第四号証を提出し、乙第一ないし第十三、第二十ないし第二十四、第二十七、第二十八、第三十二、第三十三号証の成立(うち第二十ないし第二十四、第二十七、第二十八、第三十二号証は原本の存在とも)は認める、その余の同号各証の原本の存在及び成立は知らないと述べ、控訴人は乙第一ないし第三十三号証(うち第十四ないし第三十二号証は写をもつて)を提出し、甲号各証の成立を認めた。

理由

昭和二十五年九月九日島コヨの死亡により控訴人及び訴外西条ヨスイ、奥寺トメヨ、亡松塚コンは兄弟姉妹として、訴外西条七郎はコヨの兄亡西条芳治郎の養子としてそれぞれコヨの遺産を相続したこと及び同年十二月十四日右七郎、ヨスイ、コンより盛岡家庭裁判所花巻支部に右遺産分割の申立がなされたことは当事者間に争いがなく、成立に争のない甲第四号証によれば右申立の結果同月二十日同裁判所より被控訴人が右被相続人コヨの遺産管理者に選任されたことが明らかである。控訴人は同裁判所が被控訴人を右遺産管理者に選任されたことは違法であると抗争するけれども、遺産の分割の申立により家事審判規則第百六条により選任される遺産の管理者は、民法第九百三十六条の限定承認の場合における相続財産の管理人と異り、相続人の中からこれを選任することを要するものではないし、また、家事審判法第十四条によれば、審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができるところ、右遺産管理者選任の審判に対し即時抗告をなし得る規則は存しないのである。

それなら控訴人等遺産相続人は右遺産につき管理処分の権限を失つたものと解するところ、控訴人が右遺産である原判決添附目録記載の物件を花巻市吹張町二百二十三番地所在の右遺産に属する家屋の奥一室に入れて施錠占有し、被控訴人が管理のためその引渡を求めても応じないことは控訴人の認めるところであるから、控訴人に対し右物件の管理者としてその引渡を求める被控訴人の本訴請求は正当として認容すべきである。これと同趣旨の原判決は相当で本件控訴はその理由がない。

よつて民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井義彦 裁判官 上野正枝 裁判官 兼築義春)

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